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アニメ感想置き場;よろしくお願いします

話数単位で選ぶ、2021年TVアニメ10選

今年のキーワードと言えば「涙」ですね…意識して選んだわけないが。

ウマ娘 プリティーダービー Season 2#10 「必ず、きっと」 2021-03-08
脚本:米内山陽子 永井真吾   絵コンテ:種村綾隆  演出:種村綾隆

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まともなコメントは書けない…泣

 

のんのんびより のんすとっぷ#11 「酔っぱらって思い出した」 2021-03-21
脚本:吉田玲子  絵コンテ:澤井幸次  演出:小柴純弥
過去に溺れる。記憶は未来を召喚すると同時に、どうしようもなく霧散を暗示する。この瞬間だけは、成長や時間を直視することに抵抗を覚える。テンポの良い沈黙がギャグ表現に占有されている今、ドライなラストカットに心が直撃される。仄々としていたけれど、たったの酔っぱらいの嗚咽だけれど、それを見て涙を流したのはなぜだろう。

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スーパーカブ#1 「ないないの女の子」 2021-04-07
脚本:根元歳三 絵コンテ:藤井俊郎  演出:安部祐二郎

音響演出に傾倒。生活音は呪縛のごとく、カブのない無彩色な世界のエンジンを代演する。

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SSSS.DYNAZENON#10 「思い残した記憶って、なに?」 2021-06-04
脚本:長谷川圭一  絵コンテ:五十嵐海  演出:佐竹秀幸

信じられないほどの密度の高さは、「自己救済の夢」と「死者蘇生の想像」を極限まで近づける。五十嵐さんのタッチのように映像表現の曲線が荒々しくなるにもかかわらず、屋上のシークエンスは流れる雲のように穏やかである。なるほど、狂気に満ちた異質性は、一瞬の停滞・凋落=落下のためにのみ生み出されるのだ。見えないもの=時間の表象不可能性は、人影に解体され、ひび割れたディスプレイに変形され、そして特撮の文脈のなかで激しく回帰し、夕焼けの刹那に凝縮する。表現の強度が、予期せぬ死に対する釈然とは対照的である。実際、やや乱暴ともいえる五十嵐演出は見た目以上に凝って緻密で、軽やかに外れてまた繋げ直された知恵の輪にもまた、見た目よりも重い覚悟が宿るはずだ。

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86―エイティシックス―#10 「ありがとう」 2021-06-12
脚本:大野敏哉    絵コンテ:森大貴  演出:高橋さつき

ある意味ではむかつくほど演出回が多い本作における最高の一話。ストーリーの主軸の隙間を狙って人物を補完した、亡命の旅の一息と、別の視点により構成された日常風景。カメラの性質を利用し実現された感情移入の逆転は、後半にもかかわらず劇の性質を提示する。絵コンテに森大貴さん、去年の『22/7』07話も素晴らしかった。

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Sonny Boy -サニーボーイ-#11 「少年と海」 2021-09-23
脚本:夏目真悟  絵コンテ:久貝典史  演出:大野仁愛

作画回。永遠の青空と顔に落とした影。涙の表現の抑制により突然の泣きは強調される。希の死およびその衝撃さは長良の愕然に浸透し、彼は記憶の漠然を前にして泣く。何の前触れもなく、果てしない暗闇から画面に侵入し、蜘蛛の糸のような出口。微笑む二人は見上げる途端、胸に溜まっていたイメージの塊が一瞬の余韻を残しながら完結する。スクリーンセーバーのような最終回の映像よりも、自分にとってのサニーボーイのスペクタクルは、この予備動作とフォロースルーの不在にあるのだ。

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古見さんは、コミュ症です。#01 「喋りたいんです。」 2021-10-06
脚本:赤尾でこ 絵コンテ:川越一生  演出:川越一生

新規表現がなかなか見当たらないギャグアニメは「チョークの粉」的なリアルさを被って、味わいが少し変わった気がする。京都―シャフト延長線上の深夜アニメの新しい動向を継続しながらも、ある種のヒステリーになった本作だが、騒音の中にあえて静謐を見せようとし、不毛の中にあえて豊かさをもとめようとした第一話の姿勢に魅了される。第一話は第一話であるからこそ魅力的だと言いたい。

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無職転生 ~異世界行ったら本気だす~ 第2クール#18 「それぞれの旅」 2021-11-14
脚本:高山淳史  絵コンテ:夢見太一  演出:熊野千尋

キャラクターへの愛情は深い。ロキシーのイメージは、なるほど、ロック割のお酒だということは、耳を澄ませばわかりやすい。お酒に氷を入れるのは、味がよくなるわけだが、酔いにくくなるという点を思うと、無職転生という作品世界にそう簡単に迷い込まずにいてほしいという願望が何となく伝わってくるw まあ、最終的に吸い込まれるが、その過程において、長い余韻が心の壁を鳴らしながら広がっていく。その一連の音で、心の氷が溶け、涙となって流れ出る。ところで、この作品で最もリアルなキャラクターはロキシーだと思う。最初から最後まで自分の欲望に正直で、自重と放埒が自然に両立する存在で、かなり温厚でありながらいやらしい。。

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真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました#10 「これは勇者を救う物語」 2021-12-08
脚本:清水恵  絵コンテ:徳本善信  演出:徳本善信

豊穣の土地と平和の日々と2021年アニメの特異点ともいえる徳本演出。髪の先から垂れる水滴は、憂鬱による涙粒と響きあう。感傷的な表情とバラ色の肉体とリラックスした仕草とのあいだでメリハリや奇妙なバランスが生じ、独特のユーモア。小さなバスルームに、涙をためる横顔に、今にも泣き出しそうな眼差しに、いくつかの文脈は収束していく。

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マブラヴ オルタネイティヴ#11 「それぞれの想い」 2021-12-15
脚本:鈴木貴昭  絵コンテ:大畑清隆  演出:大畑清隆

大畑演出の到達点。想像を超えた「遠近法」は神秘的で衝撃的。シルエットはもはや物理的に分離され、主体の外に投げ出されたところが、想像もつかない形で世界そのものになる。絶えず繰り返され、積み上げられたパンは笑いを誘うが、その可笑しさですら冷たい風のなか、涙とともに閃いている。

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