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川口演出の構図を語る

  アイランドTVアニメスタッフ情報が公開された以来、川口監督の過去作に興味をもって少しだけ見ようとしていたら、その強烈な作家性に心惹かれてついに夢中になってきました。今回ブログを始めたきっかけで川口演出について何かメモや解説しようと思っています。近年の川口監督作はもうほとんど見たけど、一番印象を残すのはやはり「にゃんこい!」と「絶対可憐チルドレン」ではないかと思うので、この記事ではその両作を素材にして書いてみましょう。とは言え、日本語は下手なので、うまくできるかどうかちょっと自信が足りないですね。とにかく練習にしてみましょう、間違ったところはご指摘ください。

  川口演出と言ったら、一番早く思い出すのは何でしょうか。作家性の強い演出家だから、多彩な演出技法によって作品に特徴的な仕組みは多いんだと思いますが、自分の場合、やはり一番語りたいのは川口演出作の構図ですね。まあ、構図というより、「歪み」のほうが適当ではないかと思いますけど。つまり、川口演出には印象的なパースから、画面にあるものの配置まで、その方針のコアは「歪み」ではないかと思います。

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  まずはパースから見ましょう。奥行きを強く意識させる印象的な構図というのはいかにも川口演出らしいです。その奥行きを実現するには手前にあるものを精妙に配置することだけでなく、面白いパースによってからこそです。そのうえで、キャラの立ち位置を分かりやすくかつ印象的に示し、バトルシーンや争う場面にある対立した空気が特別なメリハリで表現されます。一方、その普段ではあまり見られないパースによって、カット割りも特別になってきました。下のピクチャーを見ると分かりやすいかと思います。

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  例えば対立的な二人が語り合うというシーンです。よくある切り返しだが、川口パースによって一気に印象が変わりました。ダイナミックといった場面をさらに激しくしたり、おかしい展開をもっと滑稽にしたり、要するにケレン味を強調するということではないかと思います。

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  以上は川口パースの一般論みたいなものですね、これからもっとほかの要素を含めて考えてみましょう。具体的に言えば、川口パースの場合「アングルー地面」の関係は面白いと思います。まとめて見れば分かりやすいが、川口パースという場面に画面の歪みの程度はともかく、地面のある構図が圧倒的に多いんです。

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  「にゃんこい!」には小さな猫ちゃんが多いため、彼らを主体として写すにはカメラはよく低位置に置いておきます、それは自然な判断だと思います。そして、猫だけじゃなく、カメラから離れたところにいるキャラも写すには、ローアングルみたいな感じになります。さらに水平方向と空間的な歪みを重ねたりして、結果としてはダッチ感のあるカメラワークになっていますね。ダッチアングルみたいなのに、決して恐怖といった感情を呼び起こせず、ハイテンションになっています。それも川口演出の魅力の一つだと思います。無論、そちらの画面に全部地面があります。逆に言えば、キャラが手前にいる場合にも同じです、なぜなら川口パースの歪みは単なる傾きというよりボールみたいなものですから。と、一つ一つの被写体の位置関係を整理してみたら初めて川口パースにある地面の役割が少し分かるようになりました。即ち、地面は画面の構成要素となりながら、整体のパースの参照物として、はっきりと位置関係を示すということだと思います。特に大勢の人が画面に登場している場合、構図自体の面白さを持ちながら誰がどこにという整体的なバランスが重要だと思います。

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  ですが、キャラが空を飛ぶ時とか、カメラが空に向いているとか、どうしても地面が写されない場合はどうでしょうね。見たところ、解決方法は雲や木の葉らしいです。ちなみに、建物を示すカットには建物より立っている地面という印象が強いです。

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      このような構図もあるんです。黒ボードと机が歪んでいて面白いです。歪んだ空間と学園祭の用意しているキャラ達の気持ちの軽い芝居、違和感によって奇妙なコントラストが起こります。それを除いて、机の上にあるコップなどにも注目してみてほしいと思います。たった一つのキャラやプロップを使って映像の感情を生み出すことは川口演出の奥にある一面だと思います。その実現手段はまたパースです。

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  左のは贈り物に装う爆弾及び起爆前の一瞬、セリフとbgm一切なしでも明らかに危険を感じさせます。右のほうはもはや解説不要でもキャラは狂っているのがよくわかりますね。パンアップした後のドリーズームで、主人公に対しての信頼はその一瞬で凝縮され、そして破滅しました。ワンカットでこれほど激しい変化を出来て、川口演出の恐ろしさを味わいました。

  以上の内容はあくまでも川口演出の細かい一点しか言えません、op演出のセンスも一品ですし、構図のほうもまだまだ終わっていません。例えばコッミクのような画面分割は重要だと思います。でもそれを解説するのはちょっとめんどくさいので…今回はこれぐらいにしましょう。チャンスがあれば、やはりもっと川口演出について書きたいです、その前にまずアイランドTVアニメを心持しています。

 

  おまけその一:

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  若林信作画といえば腕の振り方ですね。

 

 

  おまけその二:

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  記事を書いたときなんか既視感があるので、昔の文章を探してみれば、もう川口パースについて書いたことがありますwww  

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  大森英敏演出作にもありますね、こういうの。中村憲由演出作(特ににゃんこい!の担当回)にもいろいろあります。こういうレイアウトが多いというと少なくとも少なくないかもしれませんね~その場合、ボールの外側・裏側というのは分類の根拠となるかもしれません。